忘れられない味

 ぼくは飲みに行くのが好きで、ビールではサッポロ黒ラベルが一番好きです。黒ラベルが大好きになったキッカケを、今でもはっきりと覚えています。

 

サッポロ 黒ラベル [ 350ml×24本 ]

 学生時代、空手部に所属していました。7月終わりに伝統の対抗戦があり、試合前の1週間は毎日、朝から昼まで強化練習があるのが恒例でした。真夏の、風の通らない道場での練習は大変つらく、昼にはバテバテになります。3時間近く練習をして、最後に体育館まわりを軽く走り、体育館前の広場で整理体操をしたらやっと終了…。すでに入部3か月たった新人部員の僕たちも、喉も乾くしヘトヘトでした。

 「なんか飲みたい」と思いながら、先輩の合図で全員車座で胡坐をかいて座ると、一人ずつ渡されたのが、キンキンに冷えた黒ラベルだったのです。とにかく何か喉に流し込みたい、そう思ってプシュッと炎天下で飲んだ冷えた黒ラベルが美味いの何の!あの味、真っ青な空、白びかりした太陽、30年たった今でも感覚が蘇ります。

 振り返れば、脱水症状に近い状態でビールを一気に飲むというのも、その時の新入部員の年齢がいくつだったか、というのも、色々問題となる要素は抱えていますが、それは今回置いておきます。とにかくそれ以来、それ以上美味しいビールに出会ったことがなく、またその時の感覚があまりに鮮明過ぎて、黒ラベルと違う味のビールを飲んでも、美味しいけどあの時ほどは…、となってしまうのです。

 味覚は五感の一種ですが、好物とは味覚だけでなく、色々な感覚、感情から作られる場合もあると感じます。つらい時や予想できない場面で、思いがけず口にした美味しいものが好物になるとすれば、そうやって好物を増やしていくのはとても素敵なことだと思います。

 そのためにも、また明日からまた頑張ります・・・(笑)。